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2008年08月14日

 ■ 感想 ソードワールドRPGリプレイxS 猫の手冒険隊編

「俺は賢者の学院で学んでいたんだが、“やつら”の陰謀に巻き込まれ、追放されてしまったんだ!
 実は、この優れた身体能力は、“やつら”に身体をいじくられたからなのだ!」
「危ない妄想」
「これは妄想ではない」
「たぶん妄想じゃないとおもう♪」
「妄想じゃないんじゃないかな♪」
「ま、ちょと覚悟はしておけ♪」

 しょっぱなからネタが濃すぎるだろうSNE。

 最近、RPG作成の資料にと、新旧取り混ぜソードワールドのリプレイやらシナリオ集やらを収集している木許なのですが、やっちまいました! 盆休みにまとめて読もうと、どっちゃり古本通販しちゃいました!! ヤッフー。
 その中の4冊が、「ソードワールドRPGリプレイxS」通称「猫の手冒険隊編」(全四巻)。今年の4月に最終巻が出たばかりの、非常に新しいリプレイ集です……というよりも、ソードワールド「最後の」リプレイなのです。
 実は先日、今年のTRPG業界を一色に染め上げている(ほんとか?)「ソードワールド2.0」が発売され、20年あまり続いた旧ソードワールドのサポートは本年をもって終了してしまったのでした。SW2.0は世界設定もルールも新規に起こされた完全な別ゲーム。というわけで、2.0移行の直前に出版されたこの「xS」が、まさしくSW最後のリプレイと言えるわけなのです。

 その最後のリプレイがこれまた……おもしろい!!
 いやー、ちょっとずつ読み進めるつもりが、2巻終了のあたりから止まらなくなってしまって、結局残り全部一気に読んでしまいました。リプレイと一緒に、そのリプレイの元になったシナリオも収録されているということで、リプレイ+シナリオ集の一粒で二度美味しい感、さらにその融合によるこれまでにない楽しさ(うわー全然GMの思惑どおりすすんでねええええええ)も味わえました。

 ゲームマスターを務めるのは、ソードワールドのシステムデザイナー、清松みゆき氏。かの有名なリプレイ第三部「バブリーズ編」のGMでおなじみの人です。GMがこれ以上ない「手練れ」であるのに加え、プレイヤー陣も(少なくともプレイングを見る限りでは)非常に重厚な構え。
 TRPGの楽しさの一つは、プレイ中に次々生み出されていく「アドリブ」と「悪のり」なのですが、こいつはまさに諸刃の剣。実際に俺も経験がありますが、悪のりばかりが暴走したセッションほど、ぐだぐだに終始するものはありません。というわけでプレイヤーにもGMにも、上手く悪のりを消化する力が求められるのです。
 プレイヤー側にすれば、それはギリギリのところで「空気を読んで」プレイする、ということになるでしょう。(脇道に夢中に鳴りすぎて本筋から離れちゃうとか、悪のりで言ったことの実現を強硬に主張するとか……駄目な例。)そしてGMにとっては、ダメなことはダメと判定する一方で、悪のりを上手く取り込んで面白いセッション(ストーリー、とはちょっと違うよね)を構築することが肝要。と、口で言うのは簡単ですが、これが非常に難しい。
 ところがその点が、この「xS」は大変うまく行っております。だいたいキャンペーン全体を貫くメインシナリオにしてからが、キャラクター作成中にプレイヤーが放った「妄想」をベースにしたもの。途中、PCたちが好き勝手に放った迷言の数々が公式設定として取り入れられ、GMがその場のノリで出したキャラクターが後々重要な鍵を担い、そしてある女性PCの一時の悪のりが、最終回で、ほのがなしい、なおかつ希望と優しさに溢れた、清々しいラストシーンを創り出す――
 GM清松氏にしてからが、過去に、うまく悪のりとアドリブを裁ききれずにキャンペーンをグダグダにしてしまった経験を持つ方です。(SWリプレイ第四部「風雲ミラルゴ編」、第五部「アンマント財宝編」については、木許はそう解釈しています)その経験をふまえてか、そして良いプレイヤーに恵まれたこともあってか、「xS」は全く見事なセッションになっておりました。

 PCたちも非常に魅力的でした。
 さすがにスイフリー率いる(率いる?)第三部パーティ「バブリー・アドベンチャラーズ(バブリーズ)」ほとではないものの、プレイヤー全員がかなりタクティカルな戦闘に手慣れている様子。天然おばかキャラのモニカ嬢すらもが、要所要所で立派に戦術的な行動を取っております。その「よく考える」姿勢は、シティアドベンチャーの部分でも発揮され、あれやこれやと策を立てて次々手を打っていくさまは圧巻の一語に尽きました。
 木許の最初のお気に入りは、モニカ嬢と、従兄弟のトリム少年のインセストカップル(従兄弟だからセーフだけどさー)だったのですが……。最初はただの変人だったドワーフのズンさんが、とても自然な形で自分の変人設定を利用しはじめたあたりから印象が代わり、やたらに人生経験豊富なハーフエルフ・ソーサラーのユーリリアさん(通称:大首領)が、とんでもない腹黒属性を露わにしだしたところで完全にやられました。ユーリリアさんかわいいわー。その性格でふとしたときに語尾「にゃ」とかやめてくれ。そのくせ、熱血下僕ヒーローのウィンドくんのことは、ことあるごとにイジメ、いじりつつも、わりと好意を抱いてそうにみえたりな。もうだめだ。

 そして最後は、グループSNEから集められた助っ人プレイヤー5名を加え、プレイヤー10人、GM1人、キャラクター数合計31人(匹)が入り乱れる、まさにソードワールドの歴史に終止符を打つ史上空前の大決戦!! これが燃えないわけがない。
 ……あ、でも戦闘だけでプレイ時間4時間ってのは、そんなもんかーって感じですね。ええ。バトルテックよりはだんぜん短いですよ。

 というわけで、ソードワールドRPGリプレイxS 猫の手冒険隊編、オススメです。リプレイ好きな人、SW好きな人は是非。

ソードワールドRPGリプレイxS
1:『猫の手冒険隊、集結!』
2:『猫の手勇者くん、突撃!』
3:『猫の手お気楽娘、幻惑?』
4:『猫の手超人王、激闘!』
全て、
著者:清松みゆき/グループSNE
富士見ドラゴンブック(富士見書房)

投稿者 darkcrow : 2008年08月14日 23:26

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