The after

前哨2

「冗談じゃないわ!」
赤いACから降りる男と少女‥つまり、唯だ。
男は更に言いたいらしくはっきり告げる
「これは本来のアリーナじゃない!金持ちの道楽‥まぁ、こちらにも金にはなるがな‥そいつらの楽しみ、只の道楽だ!」
「でも‥」
そこであたし、梨花は話を折った。
「そこであたしらはどうすれば良いのさ?」
どうやら建設的?な意見は耳に入れてるらしく、しかも最悪の事態だと話し出す。
「基本的に”死ぬべき”要らぬ観客は必要無い、つまりあいつらはここの住民全部を殺す事で満足するだろうよ」
聞いた瞬間、何も言いたくなくなった。首都の連中戦いのツケをは私たちの命の散華で見繕うと言うのだ。
「決着が付いた時点でやらんでも良い事やないの?それ?」
時遅し、と言っても人は人だ。生きる権利はあるのに彼は首を振った。
「無駄だな、良くも悪くもあんな悪趣味な連中だからな‥おまけに、今の会話も奴らに聞かれてやがる」
そう言うとレイブンは大型拳銃で近くに浮遊している物体を破壊してこう言った。
「ここは良くも悪くもステーション・シティだ、ここをリングにしている以上住民は皆殺しに会ってもアヴァロンの連中は平然とするだろうよ。
 おまけに要らぬ人名を救ったとなれば俺自身も危ない、ココは死んだ風に偽装‥はもう出来んな。逃げるしか選択肢は無いと思うが」
周囲に生き残りは居るだろうが、現状逃げる為の装備は僅かしかない。
男は対BC兵器用の装備(白兵戦用)が何人分あるかだなと皮算用する、要は酸素は多ければ多いほど生き残る面子は増えると言う訳だ。
そうやって周囲を見渡すが、負傷してない人間の方が少ない現状である。
あたし(梨花)はとんでもなく幸運だと言うしかない。
グレネードの衝撃波で様々なビルのガラスは割れ、敵ACに惨殺される状況は回避できただろうがこの中で無事に逃げおおせる状態の人の方が少ない。
撃ったのは唯じゃなくこいつのせいだと思った私は男に言い放った。
「偽善やな、あんなもん撃って、(はいさよならと)言う訳か?まだ無事な人も居るんやで??避難勧告位出さんと外道ちゃうの?」
せめて被害に有ってない人だけは‥と言うあたしの希望はむげに断られた。
「BC兵器を撃ち込まれたら装備も無い連中は邪魔なだけだ、それとも死体を踏みしめて進みたいか?」
それだけ言うと男はライフパックの状況確認をする、それを見たあたしは無性に腹が立った。
「自分だけ生き残ればそれでいい言うんか!ココは広いから無事な人だけでもと言う考えは少しも無いんか!!」
だが相手は利いた風も無く内容確認すると、銃を向けると容赦の無い選択を迫った。
「ならここで死ぬか、俺と一緒に脱出するか、すぐに決めろ。
 今有る対BC兵器装備は1人分と酸素がCo2制限で一日持つかどうかと言う位だ、じわじわ死ぬのが怖いなら直にでも引導渡してやるよ。」
ここで唯の気の抜けた質問が出る。
「要するに何人まで?あれ(AC)は持っていくの?」
一瞬気を抜いたのか銃口を上げると更に重い答えを口にした。
「コックピット内に2人と、脚部内の歩兵用貨物室に1人だな、乗せようと思えば乗ることは出来るが装備が足りん」
その言葉を聴いた瞬間に凍りついた、要するに私達3人と全員の命を天秤に掛けてるのだ。あたしは言葉を足して言う。
「気密服とか、シティ内に無いの?」
言った瞬間しまった、と思った。更に危険な事態になるからだ。
「情報漏れたら奪い合い必至だな、尤もそれを利用して目を逸らす手も有るか。上手く行けば3人揃ってコイツ共々ドロンと行ける」
ACをぽん、と叩きながら言ってのけ、再び選択を迫られた。
「どうする?」
自分に選択肢が無い事を悟ったあたしは、この男が最初に行っていた(犠牲者の無い戦い)を思い口に出した。
「最初は犠牲者出す気無かったやろ‥何故そうなったら虐殺を黙認するん?」
間髪入れずに答えが返ってくる、まぁそうだろうとは思ったが。
「本当は出したくは無いが、確実に出るなら自分の命最優先だな。現状だと唯だっけ?
 コイツと俺でコクピットに入るからお前は非常用の気密服で我慢してくれ、まぁハードスーツだから動き辛いのは勘弁してもらいたいがな」
着替える時はどうするのやら、と思ったがサイズが大きい為制服の上からでも着られることを確認すると流すであろう情報を確認する。
聞きたくは無かったが思ったとおりの答えを聞きながらうんざりしつつ貨物室に潜り込み着替えを済ませた。
備え付けの通信機で2人共乗り込んだ事を確認するとふと、昔の諺を思い出した。
「長い物には巻かれろ‥ね、あかんわこれは」
言いながら暴動とも思える雑踏を耳にしながら偽善だなと思いながら祈る、せめてもっと多くの命を救えればと。