ARMORED CORE 〜Another World〜別世界というより混合世界

ACAW 4

 先日強制的にレイヴン試験を受けさせられたレナは、家に帰ってくるなり2日間眠り続けた。
 それで今までの睡眠不足を解消したのか、3日後にはいつもどおりに起き上がってきてアレスの料理を食べ、いつもどおりに行動していた。
 レイヴン試験合格通知は別に急ぐわけでもないので、後日配送・一週間以上後希望としているためにまだ配送されていない。
 家主であるアレスは今日もまたイリーガルレイヴンとしての仕事である。
 D+に80mm対AC用ガトリングカノンとその予備弾倉、左腕に接近戦用の超振動ナイフをホルダーごと固定してジオマトリクスにとって邪魔なエムロード部隊を撃破しにいった。
 することもないので定期的にALS端末でALS回線に接続し情報収集をしていたレナだが、通信が入ったことでそれを中断した。
 ALSが展開し、ファイルのインデックスのように右上に突出しているインデックス欄に『TRAIN』と表示されているのを確認して眉をひそめる。
 ALS自体にもトレインの所属名と名前が出ておりタイトルも私用と表示されている。
 そのままにしておくわけにもいかないので、通信許可をALS端末に出すとALSにトレインの顔が表示された。
『どうもレナさん。レイヴンライセンス取得おめでとうございます。さてさて……お仕事のお話です』
 トレインが私用と銘打って通信してくるときは大抵仕事の依頼だ。それもレイヴンやイリーガルレイヴンがするようなことではないものの。
「何?」
『つい先ほどG.F.I.の輸送車両が強奪されました。「ただの」テロリストに』
 トレインはただの、という語句を強調して説明する。
『積荷は強化人間用の人工筋肉とチタンフレーム、炭素繊維などです』
 ALSの奥のトレインは座っている机で何か操作をするとALSをもうひとつ出現させて詳しい状況をレナへと説明する。
『残念ながら我が社の重役に裏切り者がいるようでして。おそらくあなたに依頼したこともばれてるでしょう。ですが、知っててもあなたが相手なら対処できない。だからこその依頼です』
「何すればいいの?」
『今すぐにシティ郊外の空港に来てください。そこから航空機でターゲット近くのE−76基地へ移動してもらい傭兵部隊とともに物資の奪還をお願いします』
 この世界、ACを駆る傭兵であるレイヴンとは違い集団で行動しMTを駆る、もしくは生身で行動する企業からしてみれば使い捨て部隊が存在するのだ。
「敵兵力は?」
『人員は不明です。現在確認しているだけでは戦車3、装甲車5、装甲兵が20です。MT・ACの類は当然のごとく大量におります、だからこその依頼ですが』
「………数」
『―――おおよそ30で10がZeyaの新型戦闘MT、Ze−22Fヴォルケノフ。残りは普通の編成ですね』
 トレインの言うようなただのテロリストにしては豪華すぎる。
 中古や旧式の改造MT40ならばわかるが、電子装備が貧弱だということ以外…機械的な面において第1線級の信頼を誇るZeya設計社の最新鋭MTが40などテロリストが保有できる兵力ではない。
 下手をすると大規模なテロリスト勢力の全戦力に値するほどの金がかかる代物だ。
 しかし、トレインとレナの間の会話においての「ただの」という言葉は旧世界の亡霊が関係していない…という意味なので一応正しいといえば正しい。
「わかった」
 レナは依頼の受諾をすると、腰のホルスターにMk80FCというハンドガンを固定するとそれを隠すためにジャケットを羽織る。
 彼女が今着ているのは黒いノースリープのシャツと紺色のズボン姿という、レイヴン試験を受ける時と同じ格好だ。
 これが彼女の普段着であり、大抵はこの服装で過ごす。ジャケットを着ないとタイトな服装なので武器などを隠しているのが一発でばれる服装だが、動きやすい服装であるためにレナはこの服装をしている。
 最終的には銃などよりも自分の身体能力が当てになるために、動きにくい服装は必要ないのだ。
 家を出ると正面の建物の屋上へとジャンプし、また別な建物へジャンプするという方法で車以上の速度で空港へとレナは向かう。
 その最中、人目につく可能性を考慮し近日中に何とかすることを決めつつもレナは次々と建物を移動し続けていた。


 G.F.I.の本社の一室、俗に会長室と呼ばれる部屋で今までレナへとALS通信していたトレインはため息をついた。
「これでよいのでしょう? ミス、ラナ」
『ああ、十分だ。いや―――十分すぎるかな』
 彼の正面に展開しているALSが映し出しているのは、金髪の女性。
『しかし………あの子によくばれないな…』
「何がです?」
 いきなり言われた言葉に首を傾げながらトレインはラナへと目線を変えた。
『GFIユニット開発部総責任者? よく言うものだ。会長のくせして』
「ああ………ばれてるんじゃないんですか? だから私のことあまり聞いてくれないんですよ」
 のほほんと言い放ったトレインにラナは呆れた表情を作った。
 ふと、それを見ていたトレインが以前から思っていた疑問を彼女へと投げかける。
「そういえば……なぜ貴女は彼女に対して難易度の高いことをさせるんです?」
 その質問に対して、ラナはにやりと笑った。
「な、なんか間違ったこと聞きました?」
『いや、そうではない。そうではないが……諸君ら人間がよく言うだろう?』
「は、はぁ?」
 なにやら含みのある台詞を言い始めたラナにトレインの瞳は丸く見開かれる。
 連邦政府の中で最高の権力を持つ二人の片割れの言葉に唖然としているだけだ。
『君たちの言葉で言うのなら、獅子は子供を崖下に突き落とすのだよ』
「子供……ですか。彼女が」
『ああ。私たち自慢の一人娘だよ……もっとも、もう子供と呼べるほどの年齢ではなくなってしまったがね』
 そういって懐かしそうな瞳をするラナに対し、トレインは沈黙した。



 アイビスシティ郊外にある大型空港はレイヴンのACやMT部隊の襲撃から航空機を守るために格納庫が地下にあり、それをリフトで地上へあげる方式を採用している。
 地下格納庫は厚さ10m以上のべトンで覆われているため短時間でのまず破壊は不可能である。
 レナは事前に渡されたG.F.I.のIDでその格納庫へと入り、用意されていたハードケースを持ってロッカールームへと入った。
 彼女がハードケースを開けると黒い服が2着。両刃の剣が2つ。そして何かのライフルが1丁。
 中身を確認したレナは、使われていないロッカーを開けて服を全て脱ぎ、ACに乗る時に着たようなインナースーツを着込むとその上にもうひとつの服を着た。
 首から下全てを覆うインナースーツともうひとつの服とセットのブーツとグローブも装着し固定。
 服に内蔵されているチップの気密がOKなのを確かめる。
 インナースーツは25型汎用多重複合積層構造操作服…通称シェルといい、もうひとつの服は25型装甲服という。
 前者、後者ともにジオフロントインダストリー社製の極秘技術で作られた服で今のところはレナやアレスを含めるNDLS保有者のみしか扱えない代物だ。
 25型装甲服の腰にあるジェネレーターパック左右1つづつ、計2つに剣を鞘ごと固定してケーブルを接続。肩にライフルを担いでロッカールームを出た。
 そのまま指定された所へ行くとそこには単座の戦闘機が停められていた。
 軍用機ならぬ白い全体塗装。大昔の大型戦闘爆撃機並みの巨大な大きさ。
 G.F.I.第2技研試作型戦術戦闘機CVFX-21 アイビスカスタム。
 この町と同じ名を持つ、ACにすら対抗できる機体である。
 レナは翼と胴体下の兵装取り付けジョイントに固定されている槍のようなもの4つとミサイル8つを点検してコクピットへと乗り込んだ。
 この機体のコクピットには1つのコントロールスティックとサイドコンソールパネルのスイッチのみしかない。スロットルも何もない。
 あるのは灰色の装甲版のみ。ACと同じALS展開型のコクピットだ。
 そのコントロールスティックですら、力を入れる必要も動かす必要もない。緊急時に感圧スティックで動かすためであり通常は25型汎用多重複合積層構造操作服、通称25型シェルとスティックの端子が触れればそれでよい。
 NDLS<ナノマシンデータリンクシステム>により脳と機載コンピューターを直接接続してコントロールするシステムだ。
 もっとも、NDLS用のナノマシンは現在の技術で再現できても、投与する側の遺伝子構造が大破壊以前のものと違うために拒絶反応で死んでしまうためNDLSを使えるのはレナとアレスを含める数人のみだ。
 レナのNDLSコードに反応した機載コンピューターがジェネレーター出力をサスペンドからアイドリングに変え、各計器のALS表示が追加され機体チェックが始まる。
 その間に、機体はリフトまで運ばれ上昇。同時にひとつずつハッチが開き通過と共に閉まる。
 数分後には主滑走路からやや離れたところへと進み出ていた。
「コントロールタワー。GFI-0E230Aの離陸許可を出されたし」
『OK、GFI-0E230A。クリアード・トゥー・テイクオフ。ランウェイB。ウインド125アット2』
 B滑走路での離陸を許可する。風は125度の方向から2ノットの強さ。という意味の空港管制独特の表現。
「了解……ジェネレーター出力クルーズへ」
 管制塔との交信中に支持されたB滑走路へと進み出し、機体に内蔵されているレーザー常温核融合炉の出力が上昇し、ACにも使われている電磁スラスターから出る荷電粒子の量が増える。
 その反動でアイビスの速度はゆっくりと上昇し、機体は揚力を得て少しずつ空中へと浮き上がった。
 と、そのとき管制官の慌てた声が聞こえた。
『GFI-0E230A! ゴーアラウンド! ドゥ・トゥー・トラフィックッ!』
「どういうこと?」
 いきなり「離陸中止、やり直せ!他の機体が接近中だ!」などと叫ばれてレナは眉をひそめた。
『軍用機の被弾機が接近している!』
「何でこの距離に来るまで気づかなかったの?」
『ステルスらしい! とにかく早く回避しろ!』
 よほど慌てているらしく、こういうときに使う専門用語などを使わずに叫ぶ管制官が事態の深刻さを教えている。
 とはいえ、もう離陸は最終段階に入っている。どうしようもない。
 正面に黒く小さい点が見え始める。
 被弾機はもう目の前……というより視認距離だ。点があっという間に大きくなっていく。
「……コントロールタワー。低高度で発生するソニックブームに注意されたし」
 接近してくる機体に視線を固定しながら、スロットルを開く。
 あっという間にアイビスカスタムの速度が音速を突破し、衝撃波を滑走路に撒き散らしながら離陸。
 高度数メートルという低さで滑走路から離れ、周辺に被害を与えながら安全距離にまで離れそれから急上昇して高度を稼ぐ。
「コントロールタワー。被弾機は問題ないの?」
『あ、ああ………今着陸シークェンスは最終段階に入った……君の離陸の被害はたいした事はない』
「そう……今からフェーズド・アレイ・センサーおよびレーダーなどの索敵系を稼動させる。対EMP防御を勧める」
 相変わらずの平淡な声でそう宣言すると、索敵系の出力をサスペンドから少しだけ上昇させる。
 彼女の乗るアイビスカスタムに搭載されている索敵系は高精度なぶん、一度電源を落としてしまうと必ずどこか破損してしまう。
 ゆえに最低限出力にまで落として機体を停止させる。
 それでも、空港側のレーダーが一瞬ホワイトアウトしてしまった。
『GFI-0E230A。グッドラック』
「サンクス」
 一般的な挨拶を交わすと、レナはアイビスカスタムのスロットルをさらに開き加速させて超音速にまで機体を加速させた。
 この速度がアイビスカスタムの巡航速度…俗に超音速巡航などと呼ばれるものだ。
 その速度を維持しても、目的地である地域までは約2時間ほどの距離が開いている。
 高度が上昇し、都市などが離れていくのにつられるようにゆっくりとレーダー・センサー系の出力を上昇させていった。
 しばらくして高度1万5千メートルにまで上昇した時点で、索敵系電子機器の出力は戦闘用の出力にまで上昇した。
 酸素マスクをヘルメットに固定し、バイザーをおろす。雲を突き抜けたため周囲は晴天。太陽光に眼がやられてしまうからだ。
「…………敵影は無し」
 事前に襲撃がある可能性は非常に高く、気を許すことができない状況でレナはアイビスカスタムを飛ばし続けた。

 目的地の近くにある空港まであと20分という距離を飛行していたとき、レナはレーダー表示に複数の輝点が表れたのを見つけた。
 位相を揃えて指向性を持たせ、長距離を高精度で索敵できるフェーズド・アレイ・レーダーは非常に広い範囲を索敵できる。
 しかもACなどに装備されているような簡易で小型なものではなく、ジェネレーター出力、本体のサイズなどにおいても比較にならない大型のものだ。
 レーダーに反応したのは12個の輝点。センサーには14個の輝点。自機の高度などを考えれば大体の敵の内容はわかった。
 レーダーに反応した12機が敵航空機。残る2機はMTもしくはACのどれかだ。
 自分と相手の速度から会敵は4分後。地上にいるであろうMTらしきものとは9分後である。
 もっとも、地上移動するAC・MTであるならば速度面で戦闘機にはかなわないので無視してしまってもよい。
 兵装システムを立ち上げ、主翼下に吊り下げられている8発のAAM<空対空ミサイル>を選択。
 シーカーの冷却と電力供給、テストランをして動作に問題がないことを確認する。
 結果は良好で、故障などは一切ない。
 こちらの戦闘準備はすでに完了した。あとは彼らの方がどうなるかである。
 そのままお互いが接近し、距離が縮まっていく中でアイビスカスタムのセンサーが相手機体のデータを表示した。
 典型的な戦闘機のレディバードだ。戦術戦闘機であるアイビスカスタムと戦闘を行うには少々役不足である。
 純粋な戦闘目的の戦闘機ですら相手にできないように設計された戦術戦闘機と戦うのは無謀以外の何者でもない。
 断続的な電子音と共にシーカーがレディバードの姿に重なり、甲高い電子音を鳴らす。
 ロックオン。
 全てのミサイルを別々の敵機にロックオンしたのを確認するとレナはトリガーを引いた。
 軽い反動と共に8発のミサイルは翼から離れて自由落下し、本体のロケットブースターに点火して目標へと迫っていく。
 初期誘導はアイビスカスタムのレーダー。中期誘導は慣性。そして終末誘導はミサイル本体に内蔵されている質量センサー。
 同スペックの戦術戦闘機と互角に渡り合うための機体と専用のミサイルは、速度と誘導能力が高い。
 30秒後にはアイビスカスタムのコクピット内にいるレナが見ていたレーダー画面から8つの輝点が消失していた。
 ――8機撃墜。
 いきなり戦力の半数以上を撃墜されたのに驚いたのか、レディバード編隊は隊列を崩す。
 そんなチャンスを逃すレナではなかった。
 スロットルを全開にし、2つある3次元ベクタードノズル採用電磁スラスターから吐き出される荷電粒子の量が驚くべきレベルにまで達する。
 通常燃料を使用する戦闘用航空機でいえば、アフターバーナーといったとかろか。
 弾かれた様に加速するアイビスカスタムは残っている4機のレディバードに突っ込んでいく。
 まるで弾丸のような加速と突入行動で一気に敵編隊を通り過ぎると旋回。背後に回った。
 残る4機のうち、一番機動が甘い敵機をロックオン。ミサイルトリガーとは違うトリガーを押すイメージを叩き込む。
 それに連動して主翼前……コクピットの左右に取り付けられた2門の25mm巡航機関砲を覆っていた装甲が開き、猛烈な勢いで弾丸をばら撒く。
 狙われたレディバードは一瞬にして機体を穴だらけにされて爆発。破片を空にばら撒いた。
 発砲を終了し、最後の弾丸が装甲を通過すると自動的に閉鎖される。
 一応アイビスカスタムはステルス性にもある程度は考慮されている機体設計である。
 僚機が撃墜されたことで冷静さを取り戻したのか、残る3機は散開しアイビスカスタムを包囲しようとした。
 25mm弾はフルロードされているが、分間1200発もの連射速度を誇る新型の巡航機関砲である。撃ちっぱなしにすれば10秒以内に弾が尽きてしまう。
 レナは機体の空力特性とエンジン出力、スラスター推力で強引な方向転換を行うと1機を撃破。
 仲間を犠牲にした2機が後先考えずにミサイルを全弾発射し、レーダーにミサイルらしき輝点が大量に表示され、コクピット内には警報が鳴り響く。
 額に汗を浮かべながらレナは機体後部に内蔵されていた対ミサイル用のデコイシステム……チャフと呼ばれる大小さまざまなアルミ箔の破片と、フレアと呼ばれる高熱源体をばら撒いて回避機動をとる。
 だが、ミサイルの群れはそれには一切反応せずにアイビスカスタムへと向かってくる。
「くっ……質量センサー…」
 自分に迫っているミサイルが最新型の質量センサーを備えており、チャフやフレアではごまかせないことを悟ったレナは高機動でミサイルを交わしながら、電子装備で迎撃することに決めた。
 すぐさま対抗電子機器が作動し、強力な電磁波がミサイル群に降り注ぐ。
 それによって電子回路の大半が焼き切られたミサイルは見当はずれの方向へ飛行していくが、1発だけは運良くそれを逃れた。
 ミサイルがアイビスカスタムへと急接近してくるのを見たレナは減速してすぐに加速した。
 減速により機体が接近し、近接信管の作動範囲に入ったと判断したミサイルは起爆。破片を周囲にばら撒いた。
 だがそのとき既にレナの機体は危険範囲を大きく離れたところまで移動していた。
「……くっ」
 激しい追いかけあいの空中機動の最中、もう1機を巡航機関砲で撃墜。残るのは1機のみ。
 1対1ならばたいした敵ではない。
 数十秒間追い掛け回し、射線を確保し25mm弾数十発を叩き込み撃破する。
 残るは地上のMT・ACのみだ。
 レナは一気に機体を降下させ続け、最大戦速で地表すれすれまで降下すると水平に飛行させてこちらへ敵意を送ってくる2機の機動兵器を確認した。
 AC・MTなどの火器では捕捉や迎撃が不可能な移動速度で通過。同時に敵が何であるのかを確認するとすぐさま上昇し敵の攻撃範囲から逃れた。
 2機の戦闘用MT。準ACとも呼ばれるタイプである程度の兵装自由度を持つが機体自体はパーツ交換が不可能な機体。
 装甲はAC用の特殊複合装甲で防御力も高く、MTからすればAC、ACからすればMTの扱いを受ける種別のMT。
 岩川島播磨重工と六菱重工の共同開発戦闘用MT。IM-032D『ルベシアナ』。
 所持している武器はクロミ製作所の高機動ミサイルポッドとおそらくは対空散弾装備であろうショットガン。
 最初からこちらが航空機で移動していることがわかっているが故の兵装。
 MTを相手にするための装備ではない。その分航空機に対しては強力無比の攻撃能力を持つ装備だ。
「やっぱり……情報が漏れてる」
 ルベシアナのその兵装セレクトを確認してレナは呟いた。
 敵側はこちらが航空機で移動してくることを事前に知っていたのだ。でなければこんな対航空機戦闘用に特化した武装などしてくるはずがない。
 つまりはトレインの言うとおりに裏切り者がいる、ということになる。
 確認さえすればMTごとき、相手にするつもりはない。
 何せこちらは高高度を超音速で飛行できるのである。地上にいるMTの攻撃範囲よりさらに上空を飛行できるのならば無駄に戦う必要などない。
 そんなものは武器と金の無駄遣いである。先ほどレディバードに使ったミサイルだって一般人では到底買うことの出来ないほど高いのだ。
 ましてや今胴体下に搭載している対AC・MT用運動エネルギー質量貫通弾……長い針のような杭は一撃で胴体を串刺しにすることが出来る唯一の武器。
 この兵装を運用できる航空機は限られている上に1発あたり2500コームもするのだ。
 無駄な出費は抑えるのがコツなのだ。
 遥か後方に点となって見えているMT2機を一瞬だけ見るとレナは機体の速度をさらに上昇させた。



 攻撃部隊を迎撃した後空港に着陸、またしても用意されていた装備を受け取って手に持ちながら指定された合流地点である空港の一角へ向かうと、そこには多数のMT輸送用大型ヘリが着陸しておりMTが固定されている。
 管制官が使用するであろう指揮車両……この空港から衛星通信を介してオペレーティングを行う車両の若干手前に5名ほどの男達が話し合っていた。
 男達はレナが近づくとにやにやと笑みを浮かべ、口々に何か言い始める。
「嬢ちゃん。GFIからの派遣者だかなんだか知らんがさっさと帰りな。しにたくなきゃな」
「そーそー。ガキは男の上に跨って男のモノ咥えてヒイヒイ喘いでいりゃいいんだよ」
「何なら俺達全員の相手でもするのか?」
 言い終わったら言い終ったで男達は笑い声をあげるが当のレナは音の大きさに一瞬眉をひそめただけだ。
 レナの反応に男たちの不機嫌度が上昇していく。
「邪魔」
 何の感情も見せず言い放ったその一言に気の短い男達の数人が指の関節を鳴らせ、1人がレナの前に立ちはだかる。
「上等だ嬢ちゃん。ここにいる全員にボロボロになるまで犯られてどっかに売り飛ばされたいか!?」
 レナの進路を塞いでいた男が右腕を振り上げて彼女の顔面に殴りかかる。
 だがレナは左手でいとも簡単に受け止める。彼女は自分の腰ほどもある太い腕をつかみ、無造作に放り投げた。
「がっ……テメエ!」
 周囲の男たちがレナに襲いかかろうとしたその時。
『いい加減にしろ貴様ら。子供と戯れていないでさっさと仕事を済ませるつもりはいないのか。それでもプロだろうが!』
 輸送ヘリに固定されているMTから低い男の声が響く。
 外部スピーカーを介して聞こえるその声に男達はびくり、と反応すると一斉に自分の機体に向かって歩いていった。
『すまんな嬢ちゃん。最近ウチの新人の質も落ちてきてな、すまないが許してやってくれ』
「別に気にしてない」
 リーダーとしての責任からかレナに謝る男に彼女はそっけない返事をすると指揮車両の中へと入っていく。
 中には幾人かの護衛とオペレーターの女性。
 オペレーターの女性はレナが入ってきたのに気づくと軽く笑みを浮かべ、口を開いた。
「はじめまして。今回あなたたちのオペレートを担当するアリスです。よろしく」
 そういって右手を差し出してくる彼女にレナは彼女の手を握る。
「よろしく。G.F.I.特殊戦術作戦部員のレナ。IDはSTOC-GFI28100ASD-000S」
 それだけ言うとレナは沈黙する。
 元来無口な性格だから話はあまり長続きしない。
「え〜と、貴女の機体届いてるわよ。輸送ヘリで一番後ろの機体。1機しか積んでないからすぐわかると思うわ」
「干渉された形跡は?」
「わからない……近寄ると彼女たち――ユニットに撃たれそうになるから調べられなかったの。ごめんなさいね」
「わかった」
 レナは軽く状況の説明を受けると指揮車両を出て、用意された自分の機体を探し始める。
 機体は比較的すぐに見つかった。
 何せアリスが言ったとおり輸送ヘリに1機しか搭載されていない上に、30名以上の人員がそのヘリを包囲している。
 その人員も普通ではない。
 全員が銀髪の女性。髪形が違うということだけを除けば、体格、顔立ち、肌の色、髪や瞳の色、身長……全てが全く同じ女性。
 彼女たちの瞳は感情を一切語らず、表情は能面のように変化がない。
 その上、隠そうともせずに武器を携行している。
 GFI-RF102ライフル。
 本来はパワーアシストされた重武装兵が所持する20mm弾を使用する軍用のライフルだ。
 ライフルから発射される20mmの弾丸は弾種にもよるが人体に当たれば何処に当たっても一発で即死する。
 当然反動も大きく、生身の人間が扱える代物ではないそれを彼女たちは当たり前のように所持している。
 この世界で生身でそのようなライフルを持ち歩く者たちは限られている。
 様々な要因を組み合わせると答えは出てくる。人型遺伝子合成生物兵器L-UnitAD。
 輸送ヘリに近づこうとするならば確実に彼女たちが殲滅行動に出る。
 戦闘用に調整されている為、人を殺すことを何の躊躇もしない。
 おそらくはトレインが直接指揮するユニット部隊から派遣されてるのだろう。
 機体に細工しようとしても、これなら不可能だ。
 レナは輸送ヘリを護衛している彼女たちの1人に近づき、無言で目線を合わせた。
 数秒間見詰め合うと、ユニットの1人が頷きレナが彼女たちが護衛する代物に近づくのを許可する。
 それと同時に周囲を警戒していた輸送ヘリへと彼女たちは撤収し始めた。
 護衛任務が完了したため、次の命令を実行し始めたのだろう。
 そんな中レナは輸送ヘリに固定されている戦闘用MTを見上げた。
 スマートな中量クラスの二足歩行型戦闘MT。機体カラーは全身を白く染められており、左肩には005FSD-EXのステンシルが表示されている。
「アルストロメリア………」
 どこか呆れたような声でレナはその戦闘用MTの名前を言った。
 かのMTの正式型番はGFI-MTA23 正式呼称はアルストロメリアという。
 つい4日前に発表された正真正銘最新鋭の戦闘MTである。
 現在生産されているのは本社直属警護部隊用に配備されている低率初期生産分36機のみ。
 左肩にある005FSD-EXの表示からEMD(技術生産開発)フェーズにおいて低率初期生産(LRIP)された36機の中のうち、先行量産された12機の中で初期能力値が一番高かった機体であるとレナはつい最近読んだG.F.I.の内部資料から判断した。
 それだけならば005FSDで済むのだが、さらにEXの表示があるということで先行量産型5号機改造型であるというのもわかった。
 たぶん、機体にいくつかの次世代型システム類などを組み込んでいるのだろう。
 G.F.I.が送り出した暴力兵士の中でも一番といえる機体かもしれない。
 レナはそのアルストロメリア―――言うまでもなく、彼女が使用してデータ収集するためのものである―――の装甲の窪みなどを利用してコクピットの中へと入る。
 操作系統は基本的にはG.F.I.の戦闘用MTと変わらないようだ。
 輸送ヘリから電力が供給されていることを確認し、機体の電源をONにする。
 トレインが直接レナに渡すように指示したらしいアルストロメリアは基本セットアップなども全て完了していた。
 細かい調整を除けばレナ専用の設定へと変更されている。
 サブパネルに表示させたデータを軽く眺めても通常のアルストロメリアに比べ、索敵能力、ステルス能力に優れていることが判明。
 ジェネレーター出力も向上しているために持たされている火器も若干強力なものになっている。
『レナさん、準備はいい?』
「問題なし。即時戦闘可能」
 アルストロメリアの電源が入ったことを確認したのだろう。アリスがレナへと通信を入れ確認をとる。
『おーおーいいねぇ。天下のGFI社員様は最新鋭のMTに乗れて』
『全く全く』
 今回僚機として出撃する傭兵部隊の一部の人間はレナに嫌味を言うが彼女はそれを無視し、舌打ちが通信を通して彼女へと聞こえてくる。
『全員に告ぐ。今依頼主から命令がきた。さっさと行動を開始するぞ!』
 リーダーたる男がそう宣言し、輸送ヘリの群れが一斉にローターを回転させ始める。
 空気を切り裂く轟音が周囲に響き渡り、鋼鉄で出来た鳥達はゆっくりと大空へと飛び立った。


 空港から2時間ばかり飛行すると砂漠地帯へと到達するようになる。
 といっても砂に囲まれているわけではない。典型的な礫砂漠地帯。巨大な岩などがゆるい渓谷になっている地帯でテロリストのアジトとしての立地条件は良い。
 つまりは、作戦領域が近づいたということである。
『えーと、聞こえてますか? 皆さん』
 ALS通信モードにてアリスからの着信。モードは相互会話モードだが、レナは戦闘前ということで空中投影式ウインドウの展開ルーチンを解除していた。
 よほどの上位通信以外は戦闘終了までこの状態である。
 大体戦闘中または戦闘直前に空中投影式ウインドウなどを展開して視界を制限するなど自殺にも等しい。
 そのためにこうやって展開ルーチンを解除するレイヴンやMTパイロットなどは少なくない。
 一応、相互会話モードで特に指定なしならこちら側のウインドウは表示されないが、あちら側にはこちらの映像はきちんと見えている。
 入力系と出力系が同一の空中投影式ウインドウで通信するのだが展開ルーチンを解除している状態…つまりは一応ウインドウは展開されているが、映像を表示しないで透明化する状態に持ちこんでいるのだ。
 これにより戦闘側は透明化されているウインドウが展開しているので視界が制限されることはなく、オペレート側は戦闘側のコンディションを確認することが出来るのだ。
 通信相手がお互い戦闘側ならお互いに透明化ウインドウを展開するので音声のみの会話となる。
「聞こえている」
 レナはアリスへと返答しながらもそれまで閉じていた目をゆっくりと開け、コントロールスティックを軽く握った。
 G.F.I.製品の特徴としてコントロールスティックは従来どおりの垂直型ではなく、水平型である。
 今回の作戦で協力する関係から設定された回線から『仲間』である傭兵達の同意もレナとほぼ同じタイミング、あるいは若干早く答えていた。
『今回のミッション………最初は時間が命です。事前の作戦通り全機投下後E−6からの援護攻撃があります。間違っても早く突入しないでくださいね』
『了解してるさ。俺への連絡なしに独断専行許すようなアホは俺の部隊にはいねぇよ』
 傭兵側リーダー……部隊名の頭文字を取ったコールサインG−1がアリスへと報告。
『では、作戦開始60秒前です。各自準備してください。なお援護攻撃は70秒後です』
 アリスの宣言と共にレナの乗るアルストロメリアのスクリーンの片隅にグリーンの数字がカウントダウンを始める。
 そのカウンタがプラスマイナス0を表示した瞬間、重い音が響いてレナは内臓が持ち上がったような感じがした。
 全機体投下。
 同時にカウンタの数字がレッドで増えていく。
 目の前に迫った地面にレナはアルストロメリアに装備された電磁スラスターに点火し、落下速度を遅くさせ着地。
 すぐさま右腕に装備されている大口径のロングライフルを構えた。
 他の機体も同様に武器を構え、前方の大部隊―――こちらを察知していたようで既にMTが全機起動している―――がこちらへと向かってくる。
 まだ敵もこちらも射程に入っていないうちに、カウンタの数値が+15を示してアルストロメリアを輸送していた輸送ヘリが5発の大型ミサイルを放った。
 それらは真っ直ぐに敵集団の『上空』へと飛翔し、爆発した。
 何がしたいんだと呆気にとられる傭兵達の中、その一瞬しか見えなかった大型ミサイルに目を細めたのはリーダー格の男とレナを含める数名だけだった。
 次の瞬間、広範囲に飛び散った破片がさらに爆発。
 あたり一面に爆炎と高濃度ジェル状の燃焼液体、針のように貫通能力を増大させた破片をばら撒いた。
 人型戦闘兵器用クラスターミサイル。集束の名前が示すとおりの広範囲攻撃用ミサイルである。
 ミサイルの半分以上を弾子としており燃料を削って射程を短くした分に弾子を詰め込んでいる。
 爆発するとその弾子の3分の2が空中で炸裂して熱量ダメージを与えるナパームジェルと装甲貫徹用の破片を撒き散らす。
 残りの3分の1は回数信管という、一定数以上の振動を与えると起爆する信管を与えられて地雷化するという極悪兵器である。
 対人用のクラスター爆弾は不発弾と勘違いさせて副次効果的に敵兵を殺すのだが、それを人型戦闘兵器用に設計変更したようなものだ。
『……あんの地雷原に俺らが突っ込めと?』
『なに考えてやがる!』
『おいオペレーター! 何やってんだ!?』
 非難轟々、口々に傭兵達が抗議するがアリスは一言でその抗議を切り捨てた。
『あの中突っ込んで戦うのが傭兵のお仕事でしょう。傭兵なんて死と隣り合わせです。死ぬ確立が多少あがっただけですよ』
 涼しい顔してアリスはそう宣言すると早く戦闘を開始しろと催促し始めた。
 口々にアリスを罵る傭兵達にも、アリスにも関係ないといった風に軽く息をつくとレナがアルストロメリアを敵集団へ突入させるべくスラスターを吹かす。
 一方的な爆撃で、一番の強敵となるであろう新型MTはすべて排除されているし、AC/MT用を主眼とした兵器相手に装甲車や戦車、装甲兵は全滅している。
「アルファ1攻撃を開始する」
 どうせオペレート用の指揮車両のレコーダー以外にも、データ収集目的のアルストロメリアに搭載されているであろうレコーダーに呟き、一番近い敵機を捕捉して突撃していく。
『お前らびびってないで嬢ちゃん見習って攻撃しやがれ! ゴルフ1、突撃するぞ!』
『ご、ゴルフ6了解』
 G1の命令によりG2からG10までの全機が戦隊を組んで突入、いまだ混乱している主力部隊との戦闘を開始する。
 集団行動を原則とするチームに臨時的に配属されたレナはそういう有機的な集団行動を出来ないのを理解しているので、離れた敵機を攻撃する遊撃任務を自ら実行してた。
 とりあえずは敵部隊外側に配備されていたためクラスターミサイルの有効範囲外にいてノーダメージの四脚MTへと右腕の主武装、127mmレールカノンを向けトリガーを引く。
 既に兵装用のメインマスタースイッチはONにしている。
 127mmレールカノンから放たれた超高速徹甲弾がいとも簡単に四脚MTを撃ち抜いた。
 装甲などというものは紙と同じというレベルの攻撃力だ。
 電磁加速という砲弾加速方法を採用している時点で実弾兵器のくせにエネルギー消費がレーザーライフル並みというのは決定事項だ。
 さらに現在の技術力では効率もそれほど良くなく、通常のアルストロメリアに装備されているのは120mmの短銃身で命中精度と射程を短くしたハンドレールガンである。
 レナのアルストロメリアはジェネレーターも高出力のものに取り替えられているのでそれにあわせてレールガンの口径も大口径のものにして砲身を延長。
 命中精度と射程距離を向上させ、威力を向上させたレールカノンを装備させられているのだが、エネルギー消費はプラズマライフル並みにまでなってしまった。
 かなり扱いにくいのだが、なんといってもその威力と射程は捨てがたいものがあるし、もともと強制的に渡されたものでどうすることもできない。
 ならば有効に使うまでだ。
 単機なので比較的敵に包囲されやすい状況のレナはアルストロメリアで回避機動を重視しながら、隙があったらレールカノンの一撃で敵を屠る。
『がっ!?』
 オープンにしておいたALS回線から男の短い悲鳴と雑音が入る。
 そして仲間を呼ぶ傭兵たちの声。
 おそらく、誰かが死んだのだ。
 だがレナには関係ない。暫定的な仲間といっても所詮傭兵と自分とは相成れない存在だということは理解している。
 最初から彼らの一員となって戦っていれば別だが、つい先程出会った人間のためにどうこうするつもりなど一切ない。
「ちっ……」
 周囲にいる敵MTのなかで一番動きが鈍い機をレールカノンで撃破してレナは舌打ちした。
 今回のミッションにあわせてレナ用にカスタムされているというのに、機体の環境設定が初期設定のままなのがわかったからだ。
 そして武器の環境設定も同じように初期設定のままだ。
 スラスタを全開にして戦線から一時的に離脱すると索敵系の表示に注意しつつ、サブパネルをキーボードモードにして環境設定の変更を行い始める。
 初期設定など、都市戦闘かせいぜい平地で行う戦闘を考慮して設定されている。
 しかし今必要なのは砂漠戦闘のデータだ。
 ここら辺、G.F.I.のプログラミング担当がいい加減だとレナが思う理由なのだが、G.F.I.の人型戦闘兵器は環境設定のバリエーションが少ない。
 最初からインストールされている設定といえば初期設定か、森林戦闘、空間戦闘、空中戦闘程度しかない。
 現在荒廃した地球が再生しつつあるとはいえ、地球の陸地で比較的多いのは平地ではなく砂漠なのである。
 さらに、火星などはテラフォーミングしたとはいえ砂砂漠地帯や礫砂漠地帯を含める砂漠地帯が一番多いのだ。
 必然的に砂漠戦闘の機会は多くなる。そのくせ砂漠戦闘用の環境設定がインストールされていないのがおかしいのだ。
 事実、エムロードやジオマトリクス、デュアルやバレーナ、六菱重工、岩川島播磨重工など人型戦闘兵器メーカーにはきちんと最初から砂漠戦闘設定が存在している。
 というわけで、G.F.I.がいい加減なことを再び実感させられたレナとしてはため息をつきながらすばやく環境設定を変更していく。
 完璧な変更とは言いがたいが、いくらか変更するだけでも戦いやすくなる。
 当然のことだが現在は戦闘区域の外れとはいえ戦闘中である。索敵系のチェックなどは忘れてはならない。
 2分ほどで機体の設定とレールカノンを含める武器の環境設定を変更したレナは再び銃弾やレーザーが飛び交う戦場へ突入した。
 レールガンで一番注意しなければいけない熱対流と熱せられた地面から立ち上る上昇気流の誤差を修正されたFCSが敵機をロックオン。
 こちらの砲戦距離だが相手の攻撃距離ではない。
 先手必勝。レナがトリガーを引き、アルストロメリアが構えたレールカノンから超音速で直径127mmの砲弾が放たれ、バソールトの重装甲を貫通する。
 先程のような誤差もかなり少ない。これ以上の向上を求めるのならやはり緊急時で適当に設定したデータではなく正規の設定データを使うべきだが今手元にそんなものはない。
 続けざまにロックオンした遠距離の敵にむけてレールカノンで攻撃しつつ、レナは離れていた間に起こった戦力差を確認する。
「アルファ1よりオペレーター、現在の状況を」
『はい。現在は敵MT21で味方が4。内容は敵がリーンエイプ7、ローバストGt5、ローバストGn5、タービュレンス4です。バソールトは全滅』
 レナの短い問いにアリスがすばやい対応で報告してくる。
「味方は?」
『ゴルフ1、ゴルフ2、ゴルフ6、ゴルフ9……あ、ゴルフ9撃破されましたので残り3機です』
「………」
『もう少しがんばってくれてもいいんですけどね。傭兵側は』
「オペレーター、私は余計な話は聞きたくない。それと私も一応G.F.I.にしてみれば傭兵」
『っとっと、失礼しました。がんばってくださいね』
 レナの言葉にあり巣が軽く謝罪し、回線が沈黙する。
 アリスの報告でレナは射撃戦闘を行いつつ軽く考える。
 現在のアルストロメリアの武装から考えて敵勢力が全滅することは確定事項だ。
 レールカノンは一撃で敵を屠ることが可能だし、40発の弾倉にはまだ34発残っている。肩の誘導ミサイルは弾速がやや遅いものの、命中率は高い。もう片方のレーザーキャノンは5発しか撃てないが威力と弾速と射程はすばらしい。
 ついでに格闘戦用にアルストロメリアの左腰に装備されている超振動ブレードはエネルギー消費が激しい武装と機体なのでACや一部の戦闘MTみたいにレーザーブレードが装備できないために装備された。ブレード自体にバッテリーがあるので稼働時間は限定される。
 では敵はどうか。要注意すべきは155mmのグレネード弾を撃ってくるローバストGnと機動力が高く実弾連射系のマシンガンを放ってくるタービュレンスと超高速連射するガトリングガンを持つローバストGtだ。
 155mmグレネード弾ならアルストロメリアを一撃で撃破することなど簡単だし、マシンガンもばら撒くタイプの兵器だから頭部のセンサー系統に当たると危険だ。
 ついでにマシンガンやライフルは弾種が選べるので何が入っているのかわからない。超高速徹甲榴弾や超高速熱化学砲弾、成型炸薬弾ならば要注意だ。
 となれば強敵はあとにするとして、比較的相手にしやすいリーンエイプを先に撃破するべきだとレナは判断し、リーンエイプを優先的に探知するようにする。
 すると比較的こちら側…傭兵側と離れた地帯にリーンエイプは集中していることが判明した。
 ならばとレナは機体のスラスター加速を停止し、走行しつつもレールカノンを1発放ってから武装を変更した。
 先程からの戦闘でレールカノンとスラスターの使いすぎでコンデンサの電力がレッドゾーン寸前まで減っていたからだ。
 レッドゾーンに突入するのはあまり得策とはいえない。本当に緊急時に必要な電力を蓄えておくのがレッドゾーンなのだ。
 ということで、武器使用時に電力を使わない実弾兵器であるミサイルを選択。FCSが目標をロックオンしていく。
 このミサイルは最大8発の中型ミサイルを連射できるし、FCSも最大8発。複数目標をロックできる優れものである。
 シーカーが射程範囲内・FCSロック範囲内にいる敵に向かってすばやく多重ロックしていく。
 リーンエイプの放った攻撃がアルストロメリアの装甲を掠った。
 距離が近づいたのでそろそろ相手のパイロットもこちらへの攻撃を当てやすくなったということだろう。
 全てのシーカーがロックされたのを確認した後、レナはトリガーを引く。
 連続して中型ミサイルが放たれ、敵が回避機動に移る。
 それをチャンスとみて、完全に回復したとはいえない電力を消費しながらレナはアルストロメリアを加速させる。
 一番近くの敵に肉薄し、腰に固定されている鞘もどきから超振動ブレードを引き抜く。
 引き抜く時の動きを利用してそのまま斜めに斬り上げ、横になぎ払う。
 4つに切断されたリーンエイプが爆発するよりも早く先程発射したミサイルが爆発を起こす。
「もう一度……行け」
 FCSが再び目標をロックオン。8発のミサイルが放たれ、兵装の状態を示す表示がミサイルの残弾が0であることを知らせた。
 アルストロメリアに装備されているミサイルは火力と誘導性能に優れる分、16発しかないのだ。
 白煙を引いたミサイルが目標に命中し爆発が起こる。
 爆煙が晴れると、大破したリーンエイプや腕や脚部に重大な損傷を負っているリーンエイプの姿が見えた。
 戦闘行動が不能なものを除いて、まだ移動できる機体や発砲できる機体に攻撃を再開しつつ、レナはレーダーを見た。
 あまり広域を走査できるレーダーではないためにそれほど役に立ちはしないが、とりあえず現状はわかった。
 友軍機たる機体の反応は1つしかない。残る2機は撃破されたのか。
「アルファ1よりゴルフ残存機へ。そちらのコールサインは?」
『ゴルフ1だ。俺以外は全滅だ。やはり旧式のローバストSrじゃ役に立たないか……』
 苦笑するような中年男性の声。
 その声にレナは数時間前の記憶を引き出す。輸送ヘリに搭載されていたのはローバストのスナイパーライフル装備型、ローバストSrだった。
 なんの後ろ盾もない傭兵部隊が装備する中でも上等なものだが、それでも10機も所持できるとは思えない。
 だとすれば中古というのも理解は出来る。
「そちらの状況は?」
『かなり…やばいな。あのガトリング野朗めが。左腕を穴だらけにされちまった』
「援護の必要性は?」
『余力があればしてくれ。ちっ!』
『ゴルフ1、4時方向距離300ATM! ユニフォーム、ユニフォーム、ユニフォーム』
『回避中だ! 間に合うかは知らんがな!!』
 聞こえてくる電子音とアリスの警告から、最後の友軍機が対戦車ミサイルで攻撃されたことを理解したレナは最後のリーンエイプに超振動ブレードを突き刺すと、味方機の方へと機体を走らせた。
 ローバストSrが回避機動を行い、逸れたミサイルが地面にぶつかって爆発する。
「アルファ1よりゴルフ1。援護する、撤退を」
『ありがたいね、このガトリング野朗めが!!』
 レナの目の前で長射程を生かしたスナイパーライフルでのアウトレンジ攻撃を仕掛けるローバストSr。
 同じように長射程兵器を持つレナとしては、これ以上ガトリングガンで弾幕を張られたくないのでアウトレンジ攻撃を行う。
 折りたたみ式のレーザーキャノンを展開し、専用コンデンサにチャージング。
 専用コンデンサの採用により大出力レーザー火器を使用する際、機動性の低下を防いでいる火器。
 重量と出力などその他もろもろの事情で弾数は非常に少ないが使い方を間違えなければ強力な火器だ。
 閃光が統制射撃を仕掛けようとするローバストGtへと向かって放たれ、5発中3発が命中。2発ははずれたが明らかに照準よりずれた方向に飛んでいる。
「くっ…レーザーキャノン残弾0」
 残る唯一の遠距離兵器、レールカノンに武装を変更しながら、次の敵を探す。
 5機いたローバストGtは3機がレナによって、残る2機がゴルフ1によって撃破されていた。
 残弾と機体状況を判断したのか、ローバストSrが戦闘領域を離脱していく。
 そこでアルストロメリア内のコクピットに鋭い警報音が鳴った。
『アラート 方位210 距離90 敵MT』
 正面ALSウインドウの片隅に表示された警告メッセージ。
 それに従い、敵機が存在しているであろう方向を見つめて唇を噛む。
 いつの間にか急接近していたタービュレンス1機がマシンガンを連射しながら突進してきていた。
 乗っているのが初心者らしく高機動行動中の命中率は低いがそれでも何発かはアルストロメリアの複合装甲の第1層に命中していた。
「回避が間に合わない?」
 コントロールスティックを操作して回避しつつ左腕の超振動ブレードを振るが、タービュレンスがコクピットを撃ち抜く方が早い。
 と、その瞬間横方向からの強力な光学兵器の直撃によりタービュレンスは爆散した。
「え?」
 タービュレンスの被弾から弾道計算を行い発砲地点を算出。その方向へと視線を向けたレナは1機のACを発見する。
 その横には、漆黒に塗装された全長20mほどの羽状の飛行ユニットらしきものを取り付けた人型の戦闘兵器。ACでもMTでもない、全く持って正体不明の機体。
 発砲したのはACの方だ。右手に持つプラズマライフルがイオン化した空気を立ち上らせている。
 問題は正体不明の人型機体だ。
 レナが乗るアルストロメリアの機載コンピューターも正体不明、識別不明と判断している。
 だがその機体を見つめるレナの表情は険しくなっていき、瞳が細められ鋭い光を放つ。
「何故、ディルフィナスがここに……?」
『あーあー………ホテル、ノヴェンバー、アルファ、ブラボー、ズールー。反応しやがれ』
 いきなりアルストロメリア内にALS通信が着信。
 比較的若い男の声がレナの耳に入る。聞きなれた声、というか聞き覚えのある声。
「ホテル、ノヴェンバー、リマ、タンゴ、フォックストロット」
『照合完了。てか、関係ないか。レナだなてめー』
 なぜか不機嫌そうな声を聞きながら、レナは苦笑した。
「そう」
『何やってんだお前? あんな雑魚の接近許すなんてな。おかげでDの奴も呆れてる』
「そちらこそ何故SWORDの人間がDといる? Dが何故生きている?」
 冷徹な声が出るのを自覚しながらもレナは言う。
『……決まっている。お前が殺し損ねたからだ。今度はお前が死ぬ番かもしれん』
 低い、とても低い男の声が聞こえてくる。
 抑揚のないという点では、レナと同一かもしれない。
『俺は先に戻る。加勢するも貴様の自由だぞ、加也』
『へーへー、契約は守るさ』
 そういうなり、正体不明機は『飛んだ』。
 文字通り、翼のような背部パーツから空間が歪んだようなものを噴き出し、上昇していく。
 上昇速度・飛行限界高度も戦術戦闘機を上回っている。この比率ならば単独で大気圏を離脱できるかもしれない。
 完全にレーダー領域から消え去るのを確認して、レナの身体から力が抜けて空気が和らぐ。
『お前さんが奴を目の敵にするのはわかるが……一応まともな奴だぞ? 分かり合えるかも知れねぇ』
「ありえない。敵対するように遺伝子が決定され、設計されている」
『お前の場合は不変更部分以外はいじれるだろうが。努力しやがれ。ったくもう』
 そういって呆れた声で加也と呼ばれた男はレナへと言う。
『ま、一応SWORDはお前の敵にはならんさ。それじゃあな、俺も忙しいんだ。あ、アレスのとこにいるんだってな。奴によろしく伝えといてくれ』
 それだけ加也はいうと、プラズマライフルを数発発砲して戦闘領域を離脱していく。
「………」
 呆れたように息を吐くと、レナは再びアルストロメリアを動かした。
 余計な乱入者がきたが、とりあえずはまだ戦闘中だ。
 再度レーダーをチェック。
 加也のAC『ディスティニーブレイカー』が発砲したプラズマライフルで4つほど輝点が消滅している。
「オペレーター、今の不明機は友好的中立と判断。不明機が撃破した敵を報告」
『…あ、はい。えーと……ローバストGnが4機撃破されてます……けど…』
 アリスが何か戸惑っている声で伝えてくるのでレナは何事かと考え、すぐに気がついた。
 彼女はG.F.I.のMT戦闘オペレーターであり、先程の正体不明機…特にACでない機体のことを報告するべきか迷っているのである。
 現代の技術では人型戦闘兵器が戦術戦闘機以上の機動性を発揮できることなどありえない。
 つまりは報告しても信じてもらえないのだが、立場的には報告しないわけには行かないのだ。
「不明機の報告は不要。報告すると社員規約第2条特例項目3にあたる」
『あれが、そう、なんですか?』
「……」
 レナは何も言わない。
 G.F.I.もこの殺伐とした世界の大企業なのだ。一般社員に知られたくないことはいくらでもある。
 その中でも、レナがいった社員規約というのは過激なペナルティが科せられることをさしている。つまりは死だ。
『何も言うな、忘れろということですね? わかりました、今のことは忘れておきます。では、戦闘の継続を』
「了解」
 通信を終了し、各ステータスを確認。
 被弾状況――先程までの戦闘で若干一次装甲が傷ついているが問題なし。
 電子兵装、武器の状況――問題なし。
 機体状況、ジェネレーター、ラジエター――問題なし。
 オールグリーン。戦闘続行可能。
 戦場は余計な支援攻撃で地雷化したクラスターミサイルの回数信管弾子でやや動きにくいがたいした問題ではない。
 レナの目にはきちんと見えているから、よけて戦闘すればいい。
 一番遠くで、一撃でこちらを撃破可能な最後のローバーストGnにレールカノンを2発叩き込み、スラスターを全開にする。
 残るは3機のタービュレンス。撃破して奪取されたトレーラーを回収すればレナの任務は完了だ。
 そのタービュレンスは編隊を組んでアルストロメリアに向かって突撃してくる。
 ついさっき命中した弾丸から、マシンガンの弾丸はファクトリーロードされた通常弾であることが判明。
 10発や20発直撃してもアルストロメリアの複合装甲が全損することはありえない。
 ということで、レナはアルストロメリアに肩膝をつかせ、移動能力を0にする代わりにレールカノンの命中精度を上昇させる。
 精密射撃モード。
 規定が厳しいACなどにくらべ、こういう細かいギミックはMTの方が豊富だ。
 敵は3機のトライアングル編隊で突撃しつつマシンガンを乱射してきている。
「…中央、指揮官狙い」
 先頭で飛び出している上に外れれば右翼もしくは左翼のタービュレンスに命中するため総合的な命中率は高いと判断してレナはレールカノンのトリガーを引く。
 そのまま、連続してトリガーを引く。
 先頭のタービュレンスの胴体に大穴が開き、四肢が弾き飛ばされ土煙と共に地面を転がる。
 さらに今度は的を右翼のタービュレンスに127mm砲弾を4発プレゼントし完膚なきまでに破壊するとレールカノンを手放し、ブレードを引き抜く。
『この…化け物め!』
 通信回線が混乱したのか、テロリスト側の音声が流れてくる。
 タービュレンスは左腕を振り上げ、アルストロメリアに殴りかかるがそれよりも早くレナはブレードを振り上げ、振り下ろす。
 唐竹割にされたタービュレンスの爆発から逃れつつトレーラーを探す。
 広域警戒センサーに反応あり。サイズとG.F.I.製品に仕組まれ、政府上層部とG.F.I.上層部以外は存在の知らないID発信機の反応から奪われたトレーラーと部品と判明。
 アルストロメリアを向かわせると、トレーラーの扉を破壊しようとしていたテロリスト達が逃げてゆく。
 おそらく電子ロックの解除が出来ず、強引に開けようとしている最中にレナたちの襲撃を受けたのだろう。
 ややぼろぼろになった感じのあるトレーラーを左腕で抱え上げ、投げ捨てたレールカノンを回収するとアリスへと報告する。
「アルファ1よりオペレーター。目標を確保、中身もある」
『はい、ご苦労様でした。現時点で任務の完了を宣言します。回収部隊との合流をお願いします』
「了解」
 通信を終了し、回線を切断。
 オートパイロットモードで回収地点まで歩かせる。機構が複雑なMTのオートパイロット機能は実に簡単だ。指定地点へ歩くだけのことである。
 ちらりとトレーラーの貨物部分へ目を向けてレナは軽く息を吐く。
 中身のことなど考えたくないが、強化人間用の素材とトレインは言っていたので気分は暗くなる。
 チタンフレームや炭素繊維、現存技術で製造されたナノマシン、光神経繊維などはまあいい。
 問題は人工筋肉だ。
 多少………どころかかなり拒絶反応の確率が高い上に生体部品なので高価、保存と輸送に手間暇かかるが移植してしまえばあとは簡単。
 移植者が栄養摂取するだけで維持できる優れもののうえ、出力、反応速度などは昔の人工筋肉よりも数段上の代物で現在はこれが使われている。
 そしてレナの気分が落ち込むのは何を隠そう、G.F.I.の人工筋肉は基本的にL-Unitの失敗作を解体する過程で手に入るものだ。
 つまりは、レナの遺伝子情報を元に膨大な人体実験を得て開発されたのである。
 そういう意味では、自分のものともいえるし、遺伝子的にはかけ離れて別人というより別種の代物なのだから気にする必要はないといえる。
 そんな面倒な関係にあるものだからこそ、気分は暗くなる。
 知り合いである加也の親友が言うには「昔、面倒は嫌いだが口癖の奴がいた」とかなんとかだが、彼女の性格もまたそれなのである。
 極力面倒なことはしたくない。それがレナの行動原理である。
「疲れた……最近仕事多い、面倒」
 誰も聞いていないのをいいことに愚痴を呟きながら、目を閉じる。
 あと彼女がすることなど何もない。やる気もない。
 ゆっくりとした動作で操作服を緩めた。この種の服は衝撃吸収性能を上昇させるために身体に密着するタイプなのだ。
 寝るのには都合が悪い。
「おやすみなさい」
 アレスに教えられた一般常識というものの一部で寝る前にはそういえと言われたのでそういって、レナは眠り始めた。
 仕事の後の眠りを邪魔されると非常に機嫌が悪くなるが、今日はそれはないようだ。
 レナが眠ったアルストロメリアは回収地点に到着すると輸送ヘリに回収され、電源がサスペンドモードに入る。
 あとは直接レナの住む都市まで運んでくれるだろう。
 おそらくこの近くの空港に預けたアイビスカスタムも誰かが回収していく。
 そんな後片付けをする人間の忙しさを無視し、レナはアルストロメリアのコクピットシートの上で身体を丸めつつ、眠り続ける。


Mission Over

本日の成績
レディバード12機
MT21機
収入
ミッションクリア:15000コーム
支出
弾薬費:G.F.I.持ち
機体修理費:G.F.I.持ち
特別支出:なし
総支出:0


アルストロメリアカスタム実験機
GFI-MTA23−005FSD-EX
全長17m
武装
GFI-MA-LC1/127 127mmレールカノン
GFI-MA-NM-8/16 16連装中型ミサイル
GFI-MA-HVT-7EX 接近戦用超振動ブレード
GFI-MA-LC188 高出力レーザーキャノン
長距離索敵センサ装備
試作1型抗探索用ステルス装備
試作型AC用高出力ジェネレーター搭載(開発ナンバーGFI-AC-GEN022A)
解説:低率初期生産型(先行量産型)の5号機を改造した代物。レナの嫌う『試作』パーツがいろいろ追加されていることは本人には絶対に秘密。