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2010年06月19日

 ■ ファイナルファンタジーXIII[PS3]

タイトル:ファイナルファンタジーXIII
メーカー:スクウェア・エニックス
ジャンル:RPG
発売日:2009年12月17日
ハード:PS3
一周クリアまでのプレイ時間:約44時間

 ゲーム感想第13弾。13弾だって! なんという偶然。言わずと知れた超大作、ファイナルファンタジーXIIIです。


◆◇◆ 注 意 ◆◇◆
 なお、この作品はさすがに超大作、まだ遊んでないからこれからやろうと思っている、という方も多かろうと思いますので、ネタバレには充分にご注意ください。全く知識ゼロの状態を保ちたい方は、このエントリーの閲覧をお控えくださるのがよいかと思います。


●結論
「足りない」
 これ以外に、FF13を表現する言葉はないのではないかと思います。
 何かが足りない。何もかも足りない。それはストーリー上なくてはならないはずの展開であり、固有名詞を登場させる前に挟むべき説明であり、キャラクターを際だたせるために必要な演出であり、超大作の名に恥じないだけのボリュームであり、本筋からはずれながらも常にFFをFFたらしめてきた遊びの部分であり、ユーザーインターフェイスの親切さであり、育成の楽しさであり、戦闘の戦略性や戦術性でもあります。
 唯一充分に満たされていたものは、FFがこの15年で培ってきたブランドイメージ通りの「すごすぎるムービー」だけだったかもしれません。しかしそれすらも、「すごいことはすごいけど、期待していたほどではないなあ」と思われても仕方がないレベルかもしれない。
 これまで、ファイナルファンタジーは、常にユーザーが勝手にイメージする「超大作ファイナルファンタジー」に勝ち続けてきました。だからこそFFというブランドは維持され続けてきました。
 そして今、おそらくシリーズ史上はじめて、言い訳のしようもない完全なる敗北を喫したのです。
 かつてのファイナルファンタジーは、豪腕でユーザーをねじ伏せる、多種多様な楽しみ方を包括する、超大作でした。その証拠に、この敗北を言い表すぴったりな言葉が、ファイナルファンタジーシリーズの中に見つかりました。

「私たち、思い出に負けたの?」

 ――「ファイナルファンタジーVIIアドベントチルドレン」より、ティファ・ロックハート


●戦闘システムについて
 今回の戦闘システムは、いつもよりスピーディな判断とコマンド入力を要求される形に変化しています。
 そのキモとなるのは、「オプティマ」の切替です。

◆オプティマ
 今回、PCたちには6種類の「ロール」が設定されています。
「ロール」とは、従来の「ジョブ」と、FF12にあった「ガンビット」をまとめたようなものです。ロールによって「攻撃力が高い」「回復魔法が使える」「敵を弱体化できる」などの特性があり、プレイヤーが操る主人公以外の戦闘メンバーは、それぞれのロールに設定された行動基準に従って自動で行動します。
 その行動基準は「HPが○○%以下になると回復」のように作られているようで、挙動は非常にガンビットと似ています。ただ、ガンビットとの大きな違いは、「プレイヤーが行動基準を自由に編集することができない」。その代わり、戦闘に支障がないように仲間たちはそこそこ賢く動いてくれます。

 で、誰がどのロールになるかは、あらかじめメニュー画面で設定しておきます。この設定のことを「オプティマ」と呼びます。
 たとえば、「全員アタッカーで全力で攻める!」だとか、「ディフェンダー・ヒーラー・エンハンサーでガチガチに守りつつ味方を強化!」だとか、設定できるわけです。
 このオプティマは最大6つまで設定することができまして、さらに、戦闘中に任意のタイミングでオプティマを変更することができます。
 要するに戦闘中にジョブチェンジできるようなもので、このあたり、FFX-2のドレスアップシステムに非常に近いものがあります。

 戦術上、このオプティマ変更がたいへん重要です。今回はザコ敵がやけに強く、気を抜くとそこらへんの兵士に殺されかねません。そこで、守りながら味方を強化したり敵を弱体化したり、あるいはブレイクゲージを溜めることに専念したり(ゲージは攻撃すると溜まる。満タンになると、しばらくダメージが跳ね上がる)、全力で回復に徹したり、チャンスには全力攻撃を仕掛けたりと、状況に応じてチョコチョコとオプティマを切替ながら戦います。
 そのためには、戦闘前にきちんと戦術イメージを持ってオプティマを編集しておかねばなりません。「こういう状況になったらこのオプティマにしよう」と考えておかなかったら、とっさの判断ミスであえなく全滅、なんてことになったりもします。また逆に、とても勝てそうに無かった相手が、オプティマの編集をやりなおすだけで、安定して倒せたりもします。

 冒頭ではああいう結論を先に述べてしまいましたが、この戦闘システム自体はかなり楽しいです。その代償として戦闘の難易度が、いつものFFよりだいぶ高く設定されているのが辛いところですが……それでも、「死んだら直前から再開できる」という救済措置のおかげで、ストレスなしとはいいませんが、まあ我慢できる程度のストレスで済むようになっています。

 問題は、この楽しい戦闘システムが自由に使えるようになるのが、プレイ開始から13時間後のことだった、ということ。
 このシステムを面白いと感じるのは、自分なりの戦略でもってオプティマを設定し、自分なりの状況判断でもってそれを切り替え、思った通りの成果を挙げられた瞬間です。だというのに、プレイ開始から13時間程度が過ぎるまで、戦闘メンバーを切り替えることができず、自分の思うようなオプティマを設定することができません。
 ……メンバーが少ないわけではないのです。5人で行動しているはずなのに、なぜか戦闘メンバーは特定の3人に固定されていて変更できないのです。(他の2人はイベントシーンになると突然出現します)

 一体どうしてこんな仕様にしてしまったのか、理解に苦しみます。もっとこの戦闘を楽しませる手段は、たくさんあったと思うのですが。

◆戦闘の演出
 今回の戦闘演出はかなり派手です。ゲージを溜めて敵をブレイク状態(先述の通り、ダメージが跳ね上がる状態)にすれば、敵を空高く叩き上げて空中コンボみたいなものを繰り出したりできます。
「重力ってなんだろう?」的なその挙動や、巨大な敵にペチペチと攻撃を当てていって隙を見て大技を叩き込むこの感覚などは、おそらくですが、「ファイナルファンタジーVIIアドベントチルドレン」におけるバハムート戦をイメージした演出ではないかと思います。
 ムービーではなくプレイヤーが操作できる戦闘シーンの演出としては、なかなかうまくあの荒唐無稽なアクションを再現しており、ここは素直に評価できます。
 欲を言えば、「豆腐のようにぶったぎられるビル」も再現してほしかったところですが……!
 少なくとも、FFXIIのときの、あのやる気のない戦闘演出に比べれば遥かに素晴らしいと思います。


●成長システムについて
 今回の成長システムは、「クリスタリウム」と名付けられています。
 が、これはFFXにあった「スフィア盤」とほぼ同一のシステムです。
 スフィア盤と違うのは、ルート選択の自由度がほぼ存在しないこと。普通に進めていると、各章で成長可能な最大限度近くまで各章ボス戦までには育てることができるので、特に成長で迷うことはありません。
 ……なにを言ってるのか分からないと思いますが、つまり、「ここまでしか育てられない」という育成限界が、章ごとに定められているのです。(正確には特定のボスを倒すことで育成限界が伸びる。どのみちストーリーを進行させる以外に育成限界を伸ばす方法はない)だから、仮に経験値稼ぎをしたとしても、ストーリーを進めないと経験値の使い道がないのです。
 スフィア盤はかなり楽しい成長システムだったのですが、これだけ似た素材を使って、よくもこれだけ楽しくないシステムを作れたものです。


●ストーリーとキャラクターについて
 主人公は、「光速」の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士ライトニング。声はエアリス。しかしてその正体は!!
重力を自在に操る……操るための機械が序盤で故障するのでゲーム中はできない。
高貴なる……ふつうの庶民。
女性騎士……ふつうのしたっぱ兵士。ちなみに伍長。
「光速」の異名(ライトニング)……実は自称。
 なにこの経歴詐称。

 まあ他にも「パルスのファルシのルシが……」とか、このへん茶化しだすときりがないので割愛しますが。
 とりあえず、今後の感想が理解できない恐れがあるので、用語解説をここで挟んでおきます。


◆用語解説

・コクーンとパルス
 パルスというのは普通の地上世界のこと。コクーンというのは、その上空に浮かんでいる空中都市です。コクーンとパルスの交流は途絶して久しく、数百年前にパルスの軍勢がコクーンを襲うという事件が起きて以来、両者の間に人の行き来は(表向き)全くありません。
 前に襲われて大きな被害をうけたことから、コクーンの住人はパルスのことを悪魔が住む地獄のような場所だと考えて恐れています。

・ファルシ
 神様みたいな存在です。コクーンの中に大小とりまぜ800万体以上のファルシがいるそうです。まんまだな。
 見た目は機械のようで、人間より遥かに優れた力を持っています。その力でもって、コクーン住人のためにエネルギーを供給したり、食糧を作ってあげたり、なにかと世話を焼いてくれています。神様はファルシとは別に存在しているという設定があるようなので、まあ、「天使」みたいなもんでしょうか。
 コクーンにいる連中とは別に、パルスにもファルシはたくさん住んでいるようです。それが「パルスのファルシ」というわけです。

・ルシ
 ファルシは、自分の目的を達成するための手駒として、ときどき人間を捕まえて使命を与えることがあります。
 ファルシに使命を与えられた人間のことを「ルシ」と呼びます。ルシになると魔法が使えるようになったり、クリスタリウムで人間離れした力を発揮できるようになったりします。
 が、その代償として、ルシにされた人間には確実な破滅がまっています。期限までに使命を達成できなければモンスターになってしまい、仮に達成できたとしても体をクリスタルの像に変えられてしまいます。
 しかも、ファルシは「使命」がなんなのか、具体的には教えてくれません。なんかそれっぽい映像を見せただけで、「何をすべきかは自分で解釈してね♪」とばかりに放り出します。
 こんな意味不明の待遇で人間がやる気を出すとでも思っているのでしょうか。まったくもう。


◆ストーリーについて
 最も「足りない」もの。それが、ストーリーです。
 たとえば、主人公の1人である「スノウ」という男が、最初のダンジョンに潜り込むには明確な理由があります。「婚約者を救い出す」という立派な理由です。
 が、プレイヤーたちは彼の婚約者を知りません。どんな名前で、どんな顔をして、どんな性格をしていて、なによりどう可愛くてどう助けたくなるのか、プレイヤーは全く知りません。
 だって、まだ彼の婚約者は一度も登場していないのですから。

 ストーリーを形作るためには、「共通認識」が必要です。どんなジャンルの作品でも同じですが、受け手は、「共通認識」を媒介にして、登場人物に共感します。登場人物のモチベーションと、受け手のモチベーションが一致したとき、受け手ははじめてストーリーを面白いと感じます。
 要するに、主人公が「恋人を助けたい!」と考えているのなら、プレイヤーも同時に「そうだ! あの子を助けよう!」と思わなければならない。つい思ってしまうように作品を作らなければならないわけです。
 共通認識を作るためには、別の共通認識をベースにしてエピソードを積み重ねていかなければなりません。見た目の可愛さであるとか、行動一つ一つの健気さ、付き合ってるときの照れくささや恥ずかしさ、一緒に遊んでるときの楽しさ、そういうプレイヤーが経験したり妄想したりして既に持っている「認識」を、ゲーム中に少しずつ追体験させていけばよいのです。その影響力はエピソードごとに異なるでしょうが、それを入念に積み重ねていくと、やがてプレイヤーの「あの子を助けよう!」という気持ちを呼び出すことができるようになります。

 だが、FF13は、徹底してその「積み重ね」を排除しています。わざとやってるんじゃないのかと思うほどに。

 プレイヤーは、見ず知らずの可愛いのかどうかも分からない女のために、単身ダンジョンに乗り込む男を操作しなければなりません。
 やっと登場しても、それが目的の恋人であることがプレイヤーには分からない、その程度の女が、何か当人たちにとっては感動的らしいシーンを演じているのを、ぼんやりと横で眺めていなければならない。

 エピソードも作らず、ただ「感動的」っぽいシーンだけを切り貼りしてみても、プレイヤーを置いてけぼりにしてしまうだけです。

◆ストーリーについて 2
 さらにもう一点。
 主人公たちは序盤、ちょっと訳あって、かなり絶望的な状況に追い込まれます。事態がどう転んでも最後には破滅するしかなく、オマケに人類の敵として人間すべてから憎まれ恨まれる存在となってしまいます。
 さて、ここからがストーリーのキモであって、つまりFF13は「絶望的な状況に陥った主人公たちが、そこからどう行動するのか!?」という話になるのであろう……つまり、最終的な破滅を避ける方法を必死で探したり、あるいは破滅を受け入れながらも世界を救ったり、何かそういうお話になるのだろう……
 と、たぶん誰もが思うと思います。俺も思いました。
 それは間違いでした。
 正しくは、「どんな話にもならない」のでした。

 主人公たちは、徹底的になにもしません。政府に追われるまま、道なりに逃げ続け、ときどきお互いに、辛い心情を辛い辛いと語り合う。状況を打開する方法を考えようともしないし、逃げ延びる先の候補すら挙げようとしません。ただただ、無目的に一本道を走るだけです。
 中盤あたりからは、「悪者たちの思うがままにはならない!」と決意するのですが、これも決意するだけ。それも、何回も何回も同じ決意を繰り返し言いますが、だからといって特に何をするわけでもありません。ただ状況に流されるまま一本道を走り続け、結果として、最初から最後までずーっと「悪者たちの思惑通り」に動き続けます。
 最後の最後で、ようやく悪者の思惑から外れた結果を導くことができるのですが、そうすることができた「理由」というのがまた……
 ある意味ネタバレになるのでここは伏せておきますが、「作劇上、絶対にやってはいけない種類の展開」をやらかしてしまった、とだけ書いておきます。

 文句は言うけど行動しようとはせず、ただグダグダと愚痴を垂れるばかりの主人公たち。これに感情移入しろというほうが無理な話です。


●総評
 旧スクウェアの作品というのは、FFシリーズ以外はだいたい荒削りで、「システムは光るけどシナリオがヘン」とか、そんな作品が多かったように思います。しかし、FFシリーズはいつも、超大作の名を冠するに値するボリュームと凄みを備えた作品であり続けたはずです。
 だが今回にそれはない。「FFの続編ではない、いつものスクウェア作品」とみれば、まあこんなものかな、という程度の作品ではあります。だが、数百万本を売り、ハードの売り上げにすら貢献するほどの影響力を持つ「超大作FF」としての貫禄は、この作品にはありません。
 と、文句ばかり書いてしまいましたが、「FF」という視点を除けば先述の通り普通のRPGではあります(シナリオは酷いですが)。スピーディで難易度の高い戦闘が好きな方、モンスターを狩って素材集めて武器を作るようなゲームが好きな方、ライトニングさんの胸元に惚れた方、などにはオススメできますよ。

投稿者 darkcrow : 2010年06月19日 03:33

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